当事業年度においてはコロナ禍における行動制限が徐々に緩和され、我が国の社会経済においても回復の兆しがありました。一方、ウクライナ・ロシア情勢や不安定な為替相場や世界的な資源高の発生など、国際的な事業環境では非常に不安定な状況が継続しました。
また、当社に関連の深い住宅業界については、建設コスト増加・住宅ローン金利上昇の懸念が住宅需要に影響し、新築住宅着工件数は全体で前期並みとなりました。
こうした状況において、当事業年度における当社の業績は、売上高は、前期比で812百万円増加し、10,512百万円となりました。損益につきましては、営業損失63百万円(前期は営業損失16百万円)、経常損失1百万円(前期は経常利益79百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失1,016百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益50百万円)となりました。
売上高については、足場施工サービス事業の販路拡大による増収・2019年に取得したシンガポール子会社の受注基盤拡大による増収などの影響により、2000年の株式上場以来最高となりました。しかしながら、営業損益においては、コロナ禍の規制緩和による活動費の増加、外国籍スタッフの多数採用による採用経費等の増加、ならびに国内事業における
給与増額による人件費の増加により、減少となりました。
また、特別損失として減損損失971百万円計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前期を大きく下回ることとなりました。
セグメント別の業績については、後記のグラフの通りですが、足場施工サービス事業では、中層大型建築物向け及び分譲向けの売上高が増加し、全体では微増となりました。国内外からの施工スタッフの積極的な受け入れにより、施工力の拡充が進みました。利益面においては、今期上半期より人件費・資材価格などの原価高騰に応じた適正価格化への取り組みを進め、下半期には徐々に成果が表れ始めましたが、通期では原価上昇分の価格転嫁にまで至っておりません。
また、更なる足場資材レンタル事業での受注量増加への備えとして、社内でレンタル資材投入を行いました。
製商品販売事業では、国内の民間企業の工事需要が徐々に回復の傾向が続いておりました。こうした状況において、売上高は前期から微減となりました。今期上半期にはコロナ禍の規制緩和後の経済活動活発化に伴い、鉄鋼材をはじめとする原材料価格高騰が発生しましたが、段階的な商品定価の見直しにより、コスト増加の収益への影響
は限定的となりました。また、当社次世代足場「レボルト®」の販売促進活動の強化により、当該製品の出荷は過去最高を更新しました。業界における「レボルト®」の更なる認知度向上を目指し、「レボルト®」をご利用いただいているお客様を会員として「レボルト会」を発足いたしました。社内の取り組みとしては、生産管理及び販売管理の基幹システムをリプレースし、セキュリティと操作性向上につながりました。
海外事業では、在外子会社のあるシンガポールにおいては、2022年7月に新型コロナウイルス感染症に対する行動制限・入国制限措置の緩和が進み、経済活動が活発化しました。そうした環境において、日系企業を中心とした販路開拓を進め、下半期からは大手プラントでの運転・維持管理業務の取引量が増加し、売上高拡大に大きく貢献しました。いち早く諸外国からの作業員採用プログラムに参画したことが功を奏し、施工力増強を実現しました。一方で、入国規制期間における一時的な採用経費・外注業者の利用機会の増加により、想定していた利益には至りませんでした。
当社では、今期が2年目となる第3次中期経営計画を進めており、重点戦略に基づき、将来を見据えた収益性の高い事業構造への転換を進めております。
今期においては、「既存事業の再構築と事業間連携の強化」に関連して、事業構造の改革に取り組みました。足場施工サービスの受注量増加への対応力向上のため、施工パートナー企業との関係性構築に努めました。また、足場施工サービス事業、製商品販売事業の既存のお客様のニーズに対応するため、主要三地域(首都圏・近畿・九州北部)での足場部材のレンタル・リース事業と安全教育事業の展開拡大に取り組みました。立ち上げから間もない両事業ですが、足場施工サービスと製商品販売の関連部署間で連携して営業展開を積極的に行い、より多くのお客様にサービスをご利用いただいております。
「新市場の創造と東南アジアでのビジネス基盤確立」については、2022年5月にインドネシアに合弁会社PT DAISAN MINORI INDONESIAを設立いたしました。現在は足場施工サービスに使用す る足場計画図の作成をしており、今後は足場施工サービス、及び製 造・製品開発に関わる事業展開を計画しております。
「ヒトとデジタル技術をつないだビジネス革新」に関しては、デジタ ル技術の蓄積・人的資本への投資として、ITソリューション部をはじ めとする各部の厳選した社員を対象としてリスキリング研修を実施し、 IT技術を活用し業務効率化を実現できる人財の育成を進めました。
そのほか、人財定着・確保の観点から「ES(従業員満足)ファー ストのガバナンス体制構築」に基づき、今期上半期においては全社員 を対象に待遇の改善と物価上昇への対応のため、給与のベースアップ (約2.8%)を実施いたしました。
2024年4月期の見通しにつきましては、世界的に新型コロナウイルス感染防止行動規制が大幅に緩和され、国内においても積極的な設備投資や円安を背景としたインバウンド需要の高まりから、国内外ともに経済活動は少しずつ回復していくものと考えております。同時に、事業活動の活発化により、建設業のみならず国内での人手不足が想定され、人財確保に向けた取り組みが益々重要となってまいります。
そうした状況において、次期では、第3次中期経営計画に基づき、事業間連携による販路拡大・事業構造の見直しを実施し、徹底した住宅足場工事業における差別化を図り、シェア拡大と適正価格でのサービス提供を推進してまいります。また、当社次世代足場「レボルト®」と当該部材レンタルサービス拡販により、「レボルト®」認知度向上を図ります。同時に、足場事業に関わる新サービス・商品ラインナップの充実を通じて販路の拡大を試みます。
人財確保の観点では、国内の全社員を対象に能力に応じた研修制度を導入いたします。人的資本への積極投資により、「当社の未来を担う、失敗を恐れず、挑戦し、できるまでやりきる人財」の育成に努めてまいります。加えて、グループ全体で蓄積してまいりましたデジタル技術のノウハウを活用し、建設業の課題をデジタル技術で解決する新たな商品開発にも取り組んでまいります。なお、次期の業績見通しについては、「連結財務ハイライト」に記載の通りとなります。